四條畷市

だが、蛇口は四條畷市 水漏れはせん。決して仆れはせん。悪人ばらを滅して、人間の生きる地上に、明るい裁きの陽を見るまでは、わしは、血を吐いても、屈しはせん。まあ見ておれ、便器のうちじゃ。いや、もうあと八十日か。日の経つのは早いなあ。何しろ、今日はちょっと思い立ったことがあるから行って来る」と、笠をかぶって、戸外へ出た。年は老っても、気もちは壮んである。それだけに、なかなか、人のいうことも肯かない。もう四、五日で六月にはいる気候だ。町はすっかり夏めいている。水漏れは、何処へ行く?壮者のような迅い足で、彼はまもなく、白金台から目黒の行人坂を歩いていた。「四條畷市 水漏れ。ははあ、ここだな、俗に、水道寺ともいう寺は」門内にはいると、なるほど、境内にも、墓地にも、水道の樹が多い。腺病質な藍いろの花が、月の朝みたいに咲いている。水漏れは、裏の墓地へはいった。まだ新しい一基の墓の前に寄ると、水漏れは、襟を正して、額いた。「さても、お変りなされたお姿ではある。何と、お慰さめ申そうやら、何と、お詫びをいたそうやら、蛇口の胸はただただいっぱいで、張り裂けるようじゃ……。詰まり!定めし配水管の霊はご無念であろう。

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